郷愁誘う湯島・本郷

数年前のこと、某紙による「街のイメージ調査」によると「休日に歩きたい街」「映画に撮りたい街」の第一位に湯島・本郷・根津地域が選ばれたそうです。その理由は「ノスタルジー溢れる日本的なたたずまいが残っている」「時間がゆっくりと進むイメージ」などが挙げられているとか。たしかにこの界隈には、逍遥、鴎外、一葉、漱石、啄木といった近代日本文学を支えた文人の旧居跡やゆかりのスポットが数多くあり、文京区という区の名称にある通り、まさに「文(ふみ)の京」と呼ばれるにふさわしい独特の雰囲気に満ちているといっても過言ではないでしょう。だからこそ文学と歴史の両面から昔懐かしい路地裏散策をゆっくりと楽しみたい中高年世代に幅広く支持されているのかも知れません。
伊勢屋質店
本郷三丁目駅から徒歩で歩いて行ける範囲だけでも、所謂旧居跡としては啄木の「喜之床」「赤心館」「蓋平館別館」、宮沢賢治・金田一京助・坪内逍遥の旧居、一葉「桜木の宿」「終焉の地」、幾多の作家が出入りした菊富士ホテル、漱石「猫の家」、鴎外の「観潮楼」など数多くありますが、建物として現存するものは、東京大学・湯島天神・根津神社関連を除けば意外に少なく、一葉の「菊坂旧居」「伊勢屋質店」、徳田秋声邸、本郷館、旧岩崎邸といったところでしょう。
これらの中で最も知られているのは、今や「紫式部以来の女流作家」として国民的人気の高い樋口一葉の、菊坂にある2箇所です。11月23日は一葉忌。毎年この日に限っては、赤門前の法真寺で法要が持たれる外、一葉が吉原に引っ越している間も通ったと言われ、彼女の葬儀の際にも香典を出す程の関係にあった伊勢屋質店の建物の内部が特別に一般公開されます。
急速に都市化が進む今日、これらスポットがいつまで現在の姿を留めていられるか分りません。好天の秋の一日、昔この界隈で生活した文人達の息吹を感じながら、ノンビリと散策するには絶好のエリアと言えるのではないでしょうか。
【散策コース:各3時間前後】
- ● 文豪の町、本郷をたずねて
- 本郷三丁目駅→喜之床→坪内逍遙旧居跡→一葉:菊坂旧居跡→伊勢屋質店→菊富士ホテル跡→啄木:赤心館跡→一葉:桜木の宿→徳田秋声旧宅→啄木:蓋平館別館(太栄館)→一葉終焉の地→春日駅
- ● 本郷から湯島界隈ぶらり散歩
- 本郷三丁目駅→一葉桜木の宿→赤門→東大→春日の局:麟祥院→湯島天神→旧岩崎邸庭園→不忍池→上野駅・上野広小路駅
原稿・写真提供:
NPO法人 東京シティガイドクラブ















